発表内容

 国立大学法人東京大学(総長:藤井輝夫)大学院農学生命科学研究科 齋藤継之教授らのグループと第一工業製薬株式会社(本社:京都市南区、代表取締役社長:山路直貴)は、セルロースの高度利用に関する共同研究で、簡便な処理により結晶構造を維持したセルロースの熱可塑化や難燃化に成功しましたことをお知らせします。私たちはこのような研究を通じて、セルロースを含めたバイオマス素材のさらなる普及を目指し、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献します。
 カーボンニュートラルを実現するための素材としてセルロースが見直されていますが、熱可塑性や難燃性がないため、その利用は紙製品や包装材料などに限定されています。一方で、TEMPO酸化反応により、セルロース結晶表面のみにカルボキシ基を持たせたTEMPO酸化セルロースは、対イオンを選択することで、有機溶媒への分散性や乳化性など、さまざまな機能を付与できることが知られています。通常、セルロースの熱可塑化や難燃化には、添加剤の混合や、化学変性による側鎖導入などが一般的ですが、それにより結晶構造の破壊、物性低下、ブリードアウトなどの問題があります。 今回、TEMPO酸化セルロースに特定の対イオンを導入する簡単な処理だけで、熱可塑化や難燃化を実現することができました。例えば本素材をシート状にしたものは、熱により自由に”成形・接着”ができ、”耐水・耐油性”を兼ね備えることもできます。また別の対イオンを選択すれば、熱に強く"燃えなく"することが可能です。さらに、天然セルロース由来の結晶構造を維持しているため、高強度・低熱膨張性・ガスバリア性なども期待でき、ナノファイバー化によるさらなる高機能化も考えられます。
 今後、熱可塑化や難燃化のメカニズム解明に向けた基礎研究や、樹脂フィラー・包装材・内装材などの関連産業分野の企業間連携を視野に入れた応用研究を進めるとともに、順次サンプル提供を開始する予定です。

熱可塑セルロースの熱成形体(左:熱プレス前 右:熱プレス後)

熱可塑セルロースのヒートシール性


難燃セルロースの燃焼試験(左:パルプ 右:難燃セルロース)

熱可塑セルロースナノファイバーの熱成形体

用語解説

  • 注1 結晶構造
     結晶における、原紙、分子、イオンの配列状態のこと。セルロースはグルコースが直線的にグリコシド結合で繋がった細長い分子であり、それが水素結合により並んで束になった棒状の長い結晶。
  • 注2 TEMPO酸化セルロース
     ニトロキシラジカルである2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン1-オキシフリーラジカルを使用し、セルロース表面にある第一級水酸基のみをカルボキシ基にしたもの。
  • 注3 ブリードアウト
     添加剤が時間の経過により材料表面に浮き出てくる現象。
  • 注4 熱可塑性
     常温で塑性を示さないが、加熱すると塑性変形しやすくなり、冷却すると再び固くなる性質。
  • 注5 難燃性
     燃えにくい性質。

問い合わせ先

<本研究に関するお問い合わせ>
第一工業製薬株式会社 戦略統括部 広報IR部
TEL.075-323-5951 E-mail: d-kouhou[アット]dks-web.co.jp
〒601-8391 京都市南区吉祥院大河原町5

※[アット]を@に変えてください。

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齋藤 継之