プロフィール
専攻 |
生物材料科学専攻
Department of Biomaterial Sciences
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研究室 |
高分子材料学研究室
Laboratory of Science of Polymeric Materials
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職名 |
教授 / Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
環境にやさしいプラスチックの開発を通じて世界に貢献する!
現在、海洋マイクロプラスチック汚染に代表されるように、ポリエチレンやポリプロピレンなどの環境中で生分解しない石油合成プラスチック廃棄物による環境汚染が、地球規模の解決すべき重要な課題となっています。その解決策の一つとして、環境中の微生物によって二酸化炭素と水にまで完全に分解される「生分解性プラスチック」の開発が望まれています。さらに、エネルギー使用量の増大に伴う化石資源の枯渇、プラスチック生産ならびに焼却時に発生する二酸化炭素による地球温暖化防止の観点から、石油ではなく再生可能な植物バイオマスを出発原料として生産される「バイオマスプラスチック」の重要性も益々高まっています。
私は、バイオマスから生産され、環境中で生分解する「生分解性バイオマスプラスチック」の開発に精力的に取り組んでいます。多糖類や植物油などを出発原料として、微生物発酵や化学合成の手法を用いて環境にやさしいプラスチックを生産する合成技術の開発に加え、高性能フィルムや高強度繊維、耐衝撃性や耐熱性に優れた部材への成形加工技術の開発、X線や大型放射光を用いた成形体の構造解析、分解酵素によるプラスチック分解機構の解明、山・川・海・深海環境下での実環境生分解試験、河川水や海水を用いた実験室内生分解性試験(BOD試験)を行い、合成から分解まであらゆる観点からの研究に取り組んでいます。最近では、有人潜水艦であるしんかい6500に自ら乗船し、水深1000~5500mの深海底で、我々が開発した生分解性プラスチックは微生物により分解されることを世界で初めて明らかにしました。
これら一連の研究を通じて、持続可能な社会の構築と美しい地球環境を子々孫々にまで残すことを目指しています。
教育内容
物事を多面的・多角的に考え、世界に発信できる力を身に着ける!
私が研究対象としているプラスチックは、人類の生活を非常に豊かにしてくれた20世紀に開発された最も素晴らしい素材と言っても過言ではありません。現在、プラスチックごみ問題などでプラスチック自体が悪者にされていますが、軽くて・丈夫で・長持ちするプラスチックは、将来にわたっても使い続けると思っています。家電や自動車などに使う部材は、きちんと回収すればリサイクルすることもでき、環境負荷を低減することができます。しかし、農林水産用資材などは、全てを回収することができず環境中にゴミとなって流れ出ていくことも事実です。どのような場所で、どのくらいの期間使われるか、回収できるか・難しいかなど、様々な観点で物事を考えなければなりません。また、工学的・農学的な手法でプラスチックを作る技術の開発のみならず、サーキュラーエコノミーの観点、製造から廃棄までどれくらい環境負荷が低減できているかなどのライフリサイクルアセスメントの観点など、社会科学的な考え方も必要です。
学生さん達には、物事を多面的・多角的に考えられる力を身に着けてもらいたいと思っています。そのためには、自身の専門を極めることは大切ですが、専門以外の分野にも興味を持ってもらいたいと思っています。
また、プラスチックの問題は研究室内だけ、日本国内だけでは解決できない問題です。学生の間に海外留学を行い、異文化に接し、世界の動向や様々な人の考え方を知ることはその後の人生に大きな影響を与えます。私自身も博士課程2年生の時に1年間、フランスに留学しました。この経験を多くの学生さんにも体験していただくためのサポートをしたいと思っています。
共同研究や産学連携への展望
基礎研究を土台に、社会に役立つ素材開発を共に!
私たちが開発している環境にやさしいプラスチックは、コンセプトだけでも、少量合成が成功しただけでも、単にフィルムや繊維ができただけでも、ちょっと土の中で分解するだけでも、社会に貢献出来るわけでもありません。大学なので、ゼロからイチとなるアイデアや技術を発見することが最も重要ですが、我々の基礎研究の内容を理解し、共に製品化に向かって取り組んでくれる企業の方々との連携は不可欠と考えています。
当研究室で行っている基礎技術を生かし、ポリマーの大量合成、高性能を有する部材への連続的な加工技術、大型放射光解析により得られた内部構造の知見を活かした製品開発、様々なポリマーの酵素分解試験や環境水を用いたBOD生分解性試験、深海を含む実環境分解性試験などに、一緒に取り組めれば幸いです。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 生分解性、プラスチック、バイオマス、多糖類、セルロース、繊維、フィルム、成形加工、分解微生物、分解酵素、構造解析、X線、大型放射光、高分子、ポリマー、環境分解、酵素分解、ライフサイクルアセスメント
キーワード2 : プラスチックごみ、石油資源の枯渇、地球温暖化、マイクロプラスチック、環境保全、カーボンニュートラル、海洋汚染、リサイクル