プロフィール
専攻 |
附属アジア生物資源環境研究センター
Asian Research Center for Bioresource and Environmental Sciences
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研究室 |
沿岸海洋環境学
Laboratory of Coastal Marine Environment
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職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
有害微細藻類の形態・系統・分布を明らかにして被害対策に貢献します
微細藻類(植物プランクトンなど)は基礎生産者として海洋の生物生産を支える重要なグループです。しかし、一部の種は海洋生物や人にとって有害な物質を生産するため、これらが大量増殖すると魚介類の斃死が起こり(有害赤潮)、これらの毒が蓄積した二枚貝等を食べることで健康被害が起こります(貝毒)。このような有害藻類を原因とする赤潮や貝毒は日本沿岸でも毎年発生しています。赤潮被害の軽減そして貝毒中毒の防除を目的とした調査研究が行われていますが、顕微鏡のみで観察できる微細藻類には分かっていないことがまだまだ多く、これまでに報告がなかった有害藻類もしばしば出現します。研究室では、日本と東南アジアの沿岸域を主なフィールドとして、これら有害微細藻類の系統、分類、分布に関する研究を行っています。形態的・遺伝的特徴から未記載種を識別し、これまでに渦鞭毛藻やラフィド藻などの6新属23新種を記載しています。有害種については種内系統群を識別することで、系統群ごとの世界的な分布や生態的特性を明らかにしてきました。これらの研究成果は、論文発表だけでなく、東南アジア各国で開催してきた研修会等で有害藻類モニタリング担当者に直接伝えてきています。
教育内容
単細胞性藻類の構造と系統を知る
学部生向けには、「水の環境科学」や「浮遊生物学」などで単細胞性藻類の進化、分類群の特徴、有害藻類の種類と被害対策などに関する講義を担当しており、実習では植物プランクトンの顕微鏡観察と同定を担当しています。微細藻類に関するこれまでの知見や研究成果だけでなく、日本や東南アジア沿岸域での現地調査、トレーニングコース、ワークショップ等の活動を通して現地研究者から直接得た情報を加えながら、分かりやすい言葉で伝えるよう心がけています。研究室では、学部生は水圏生物科学専修、大学院生は水圏生物科学専攻に所属し、水圏生物環境学研究室と同じ部屋・セミナーになりますので植物プランクトンだけでなく、動物プランクトンや海洋学等について広く学ぶこともできます。研究室メンバーは主に海産有害微細藻類の系統分類研究を行っています。日本や東南アジアで採集した海水試料を研究室に持ち帰り、顕微鏡下で細胞を単離して培養株を作成します。培養株の電子顕微鏡観察、分子系統解析、色素分析などを行い、細胞の進化、系統、分類、分布、生態等について考察しています。
共同研究や産学連携への展望
微細藻類に関する共同研究と同定研修会
微細藻類の系統、分類、分布、生態等に関する研究を行っています。微細藻類の分類と同定に関する知見、そして培養株作成、微細構造観察、分子系統解析、色素分析等の技術を用いて、国内外の大学、研究機関、企業との共同研究を実施しています。これまでには渦鞭毛藻の系統分類に関する研究のほか、渦鞭毛藻葉緑体の細胞内共生(筑波大学)、新規貝毒アザスピロ酸を生産する有毒渦鞭毛藻(水産技術研究所)、北海道東部赤潮の原因種同定と混在種識別(水産技術研究所、北海道立総合研究機構、北海道大学など)、東南アジアにおけるラフィド藻シャットネラの系統地理(マラヤ大学、マレーシア大学サラワク校など)、フィリピン沿岸のカレニア科有害渦鞭毛藻(セントラルルソン州立大学、フィリピン大学ディリマン校)、ベトナム養殖池の微細藻類(長崎大学、カントー大学)、アジア養殖池の微細藻類相と色素組成(企業との共同研究)などに関する共同研究を実施してきました。また、国内外で有害藻類の同定研修会を支援しており、東南アジア各国で有害藻類モニタリング担当者や若手研究者を対象としたトレーニングコースを開催し、有害藻類の分類と識別に関する知見と技術を提供してきました。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 藻類学、系統分類学、進化、分布、新種記載、微細構造、電子顕微鏡、系統解析、光合成色素、植物プランクトン、微細藻類、渦鞭毛藻、ラフィド藻
キーワード2 : 有害藻類、赤潮、貝毒、培養、同定、色素分析、東南アジア、東アジア