プロフィール
一般の方へ向けた研究紹介
草原の空間パターンが導く持続的利用
東アジアの乾燥地では、人間の利用変化や気候変動により土地や植生が劣化する課題が存在しています。私の研究は、これらの課題を「植生がもたらす生態系機能」という視点から解決することを目指しています。
第一の研究の柱は、黄砂発生源対策です。春に日本にも飛来する黄砂は地球規模の環境問題で、その発生源は植物が生育する環境です。従来の研究では植物の被覆率(地面を覆う割合)のみが注目されていましたが、実際には植物の空間配置が風食の量と頻度に大きく影響することを明らかにしました。低木の高さと配置パターンを考慮した新しい指標を開発し、従来指標より高精度で風食発生を予測できることを実証しています。
第二の柱は、遊牧最適化に向けた植生モニタリングです。遊牧は乾燥地の持続可能な土地利用の伝統知で、気候変動下での極限環境における持続的土地利用手法の理解は重要です。家畜の行動をGPSで追跡し、植生の量と質の時空間変動を詳細に分析しています。地形による水分条件の変化や家畜利用の影響など、植生分布に及ぼす要素を研究しています。
これらの研究により、乾燥地植生が持つ「風食軽減」と「牧草生産」という生態系機能を科学的に評価し、環境保全と生産活動を両立する土地管理手法の確立を目指しています。今後は研究成果を統合し、放牧利用される乾燥地で防災と生産性の両面から持続可能な土地管理手法を提案したいと考えています。
教育内容
未来の地域を創る実践力を育成
ランドスケープエコロジー実習では、人口減少時代のグリーンインフラ(自然を活用した社会基盤)をテーマに、地域課題の解決策を提案する力を身につけます。
実習は3段階のアプローチで構成されています。まず、過去から現在にかけての地域の環境変化と都市計画の歴史を理解します。次に、生物多様性・生態系サービス(自然が人間に提供する恵み)・防災減災の観点から地域を多角的に分析します。最後に、人口減少という現実を踏まえた上で、自然環境を効果的に活用した持続可能な地域づくりプランを立案します。
特に防災減災の観点では、緑地が持つ洪水抑制機能や土砂災害防止効果、ヒートアイランド現象の緩和効果などを評価し、実際の地域計画に反映させる方法を学びます。また、里山や都市公園、農地などの多様な自然環境が持つ多面的な価値を理解し、それらを統合的に活用する視点を養います。
研究指導では国内国外問わず草地における生態系の構造およびその機能に関する教育活動を行っています。
共同研究や産学連携への展望
科学技術で砂漠化対策を実用化
私たちの研究成果は、多様な産業分野での実用化が期待されています。特に注目されるのは、ドローンと衛星画像を活用した植生モニタリング技術です。この技術は農業分野での作物生育管理や牧草地の品質評価、林業での森林健全性診断などに応用可能で、精密農業やスマート林業の発展に貢献できます。
また、植生の空間配置が風食に与える影響に関する研究成果は、緑化事業や造園業界での技術革新につながります。従来の「とにかく植物を植える」という発想から、「効果的な配置で最大の効果を得る」という科学的アプローチへの転換を支援できます。これにより、限られた予算でより高い防災効果を実現する緑化計画の策定が可能になります。
学術研究と産業界のニーズを結びつけ、地球規模の環境課題解決に貢献したいと考えています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
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キーワード
キーワード1 : ランドスケープエコロジー、乾燥地生態系、生態系サービス、生態系機能、土地劣化、風食防止、黄砂・ダスト、植生空間分布、ドローンリモートセンシング、遊牧、草原生態系
キーワード2 : 砂漠化対策、土地劣化、風食防止、黄砂・ダスト、持続可能な土地利用(SLM)