プロフィール

一般の方へ向けた研究紹介

嗅覚の仕組みの研究を通じた「匂い」の理解

嗅覚は、空気中の揮発性低分子化合物を検出する感覚です。鼻腔内の嗅覚受容体を持つ嗅神経が匂い物質を受け取ると、信号が脳に送られ、匂いとして知覚されます。ヒトには約400種類の嗅覚受容体があり、それぞれ異なる匂い物質に敏感です。こうした受容体によって、私たちは多様な匂いを識別できます。しかし、匂いの知覚は単に分子の物理化学的特徴に直結するわけではありません。例えば「フルーティー」や「花のよう」といった印象は、分子構造だけからは予測できない場合があります。知覚は、匂い物質の特徴に加え、経験や文脈、身体の状態などの情報が脳内で統合されることで形成されます。私たちは、匂い物質が鼻に入ってから知覚に至るまでのヒトの脳内での処理過程を明らかにすることで、嗅覚への理解を深めることを目指しています。

教育内容

農学部で拓く嗅覚のヒト脳機能イメージング

ヒト脳機能イメージングと聞くと、まず思い浮かべるのは教養学部や医学部かもしれません。一方、農学部を志望している方にとっては、「脳機能イメージング」という分野は新鮮に感じられるでしょう。私たちの研究室は、農学部にありながらヒト脳機能イメージングにも取り組む、全国的にも珍しい存在です。匂いの正体は化学物質であり、その研究には化学物質を扱うための高度な技術と設備が欠かせません。農学部にはこうした分析環境と化学の専門家がそろっており、匂い物質の分析と脳機能イメージングを同じ研究室内で行うことが可能です。さらに、隣接する医学部との共同研究を通じ、空腹などの生理的状態と嗅覚の脳内処理との関係を探ることもできます。嗅覚や食に関連するヒトの認知神経科学に関心を持つ方にとって、農学部ならではの恵まれた研究環境を体験できる貴重な機会です。関心のある方は、ぜひ研究室をご訪問ください。

共同研究や産学連携への展望

心理的要素を含めた総合的な香り体験の科学

食べ物、香粧品、空間など、香りが製品やサービスに与える影響は多岐にわたります。重要なのは、消費者が匂いに対して常に同じ印象を持つわけではなく、場面や状況によって好まれる香りが変わるという点です。さらに、香りの印象には、同時に経験する他の感覚情報や言語情報など、人間特有の要素も大きく影響します。そのため、香り体験を理解するには、ヒトの感覚や心理の仕組みを深く研究することが不可欠です。私たちの研究室では、心理的側面も含めた総合的な香り体験を科学的に解明し、企業や法人との共同研究を通じて、消費者に新たな価値を提供する基盤を築いています。産学連携を通じ、社会に還元できる知見を発信します。

研究概要ポスター(PDF)

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キーワード

キーワード1  :  嗅覚、多感覚、知覚、脳、生理、心理、行動、食、官能評価
キーワード2  :  心身の健康、OoL、絆、食べる喜び