プロフィール

櫻井 建吾

櫻井 建吾

SAKURAI_Kengo

専攻 生産・環境生物学専攻 Department of Agricultural and Environmental Biology
研究室 生物測定学研究室 Laboratory of Biometry and Bioinformatics
職名 助教 / Research Associate

一般の方へ向けた研究紹介

育種とは何か、そして効率化へ向けて

私たちの身の回りにあるお米、野菜、果物、家畜などは、長い時間をかけて人の手によって改良されてきたものです。この遺伝的な改良のことを専門用語で 育種と呼びます。育種では、例えば「たくさん実がなる」「おいしい」「病気に強い」といった、役に立つ特徴を持つ動物や植物を選んで、次の世代を作っていきます。昔から、人は実際に見たり触ったりして、良い個体を選んできました。これを「表現型選抜」といいます。表現型とは簡単にいうと、目に見えたり感じられたりする特徴のことです。例えば、身長が高い、花が大きい、果実が甘いといったことになります。育種を行う専門家は 育種家と呼ばれます。優れた育種家は長年の経験と鋭い観察力を持っていて、その判断力は「芸術的な仕事」とまで言われることがあります。しかし、育種は芸術ではなく、人々の暮らしを支えるための、とても重要な技術です。例えば、世界の食料問題を解決するには、より早く、確実に優れた品種を作り出す必要があります。ここで今注目されているのが、データを使った育種の効率化です。

教育内容

測る・モデル化・意思決定。データで育種を科学する

私は、データ駆動型育種という、植物や動物の遺伝情報や表現型データを活用して育種を効率化する研究に取り組んでいます。データ駆動型育種は大きく「測る」「モデル化」「意思決定」の3つのパートに分かれており、ゲノムデータを用いた予測技術、カメラやドローンを活用した高効率表現型計測、統計解析やシミュレーションを用いた最適な育種戦略の設計など、データ解析と生物学の知見を融合させた研究を進めています。 こうした研究を通じ、駒場生や大学院進学希望者には、生物学や統計学、情報科学の基礎を理解したうえで、実際のデータを用いた解析やモデル構築に挑戦してもらいます。研究室では、RやPythonを用いた実践的なスキルの習得、データの解釈や仮説検証の方法、実際の圃場におけるデータ取得の経験を重視しています。これにより、学生自身が問いを立て、データを駆使して答えを導き出す力を養い、育種や生命科学の分野で活躍できる次世代の研究者として成長できるようサポートしています。

共同研究や産学連携への展望

データと農学の力で、育種の未来をひらく

私たちの研究室では、植物や動物の育種に関わる「データの取得」「モデル化」「最適化」について複数の学生が様々な角度から研究を行っています。このようにデータを集めるところから分析、最適な育種方法の提案までを幅広く研究している研究室は、全国的にも多くありません。私たちの強みは、育種が直面している気候変動や食糧問題といった重要な課題に対して、データと農学の力で具体的な解決策を考え、実際に試すことができる点にあります。研究室では、表現型のデータを集めるだけでなく、ゲノムデータと組み合わせることで予測モデルを作り、育種の現場で役立つ最適な戦略を設計することまでを視野に入れています。今後は、育種関連の企業や、農業や食品、環境分野の法人の方々と一緒に、持続可能な食料生産や新しい品種の開発、AIやデータ解析を使った現場の課題解決に取り組んでいきたいと考えています。大学と企業・法人が力を合わせることで、より実用的で意味のある成果を生み出していけると期待しています。

研究概要ポスター(PDF)

生物測定学研究室
櫻井建吾 homepage

関連プレスリリース

微生物群と代謝物のデータを統合し分類する新解析法I-SVVSを開発

キーワード

キーワード1  :  育種、データ科学、最適化、量的遺伝学、モデリング、ダイズ
キーワード2  :  気候変動、食糧問題、持続可能性