プロフィール
専攻 |
応用生命化学専攻
Department of Applied Biological Chemistry
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研究室 |
生物化学研究室
Laboratory of Biological Chemistry
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職名 |
教授 / Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
生物間の嗅覚コミュニケーションを科学する
多くの生物では、匂い、フェロモンといった化学物質の情報を嗅覚で感知することによって、食物認知、個体識別、生殖活動、社会行動など生存に不可欠な行動や習性が制御されています。私たちの研究室では、主にマウスとヒトを対象に、天然物化学、細胞生物学、分子生物工学、脳機能計測など化学と生物の融合領域の最先端技術を駆使して、匂い・フェロモン→受容体→脳神経回路→行動・生理・情動・心理のシグナルフローの様々なレベルで多角的な学融合研究を推進しています。研究対象とするマウスの行動・生理は、摂食、誘引、忌避、攻撃、探索、性行動、養育などです。ヒトの情動・心理としては、美味しさ、好き嫌い、安心感、愛着、心地よさ、ストレスなどです。生物同士の匂いやフェロモンによる嗅覚コミュニケーションを理解することは、動物の共生のための環境生態系の保全、ヒトの健康・QOL・well-beingの向上につながります。
教育内容
仕事ができる人間になる
研究生活を通して身につけてもらいたいことは、研究遂行能力(実験技術)、プレゼン・論文作成能力(論理力)、共同研究能力(社会性)、国際的感覚(国際性)です。研究をやる上で重要なことは、「Question」本質的な着目点、「Approach」ベストな技術、「Logic」論理だった考え、「Color」自分の色の4つだと思います。そして、サイエンスは不可能を可能にしてきた歴史なので、できないことも可能にしたいと思って、トレンドに流されず・徹底的にこだわる気持ちが大切です。また、時に遊び心をもった実験からとんでもない発見が出てきたりします。その時に必要なのは、人間のバイアスを捨てて、素直な「目」による解釈です。こういったフィロソフィーを伝えながら、研究に限らず仕事ができる人間になってほしいと思って研究教育をしています。そして、匂い・香りの研究をやっているので、論文・成果が出たときや学位取得時には食事会をして嗅味覚実践で「おいしさ」がわかる人間になってほしいと思っています。
共同研究や産学連携への展望
香りのヒューメインな活用に向けて
匂いやフェロモンは多くの動物にとって生死に関わる重要な情報ですので、環境生態系は匂い・フェロモンで構築されていると言っても過言ではありません。そういう意味では、嗅覚の理解は環境保全にも役立ちますし、環境における動物の行動の制御に匂いやフェロモンが活用できるという応用的側面があります。一方、人間社会では、香りは人の心理・生理・情動・行動に作用し、私たちの生活の様々な場面でQOLを左右します。また香りは、言葉の発達していない幼少者から支援の必要な高齢者まで幅広い年齢層で、快適さ、安心感、わくわく感など、心の豊かさを高めることにも貢献できる可能性を秘めています。しかし、香りの活用はまだまだ未開拓と言わざるを得ません。香りを感じる嗅覚受容体は約400種類と非常に多く、数十万種とも言われる多数の香り物質との反応も、遺伝子多型の影響により個人差があります。また、香りは経験や文化、体調などの影響を受けて感じ方や嗜好も変わります。このような嗅覚の可塑性・複雑さのため、言葉に表せない香りの概念を客観評価できないことが香りの産業利用のボトルネックとなっています。私たちは嗅覚受容体ビッグデータや先端の脳機能計測技術を駆使して、人の香りの感じ方の脳モデルを開発し、食や生活空間への応用を目的とした基礎研究を進めています。五感の相互作用(クロスモーダル)も含めて、今後、人同士のコミュニケーションにおける嗅覚の重要性が認識され、匂いや香りの適切な活用が私たちのWell-beingを高めることにつながると思っています
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 匂い、フェロモン、香り、動物、細胞、神経、脳、行動、生理、心理、情動、食
キーワード2 : 環境問題、食料問題