プロフィール
専攻 |
獣医学専攻
Department of Veterinary Medical Sciences
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研究室 |
獣医病理学研究室
Laboratory of Veterinary Pathology
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職名 |
教授 / Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
多様な動物の疾患から病気の成り立ちを学ぶ獣医病理学
獣医病理学は、様々な動物の疾患を主に形態学的手法を用いて研究する学問です。なぜ動物に病気がおこるのかを知ることは、その予防や治療方法を知るうえで欠かせません。
私たちの研究室では、長期的研究テーマとして、各種高齢動物における脳の老化病変の特徴を明らかにすることに取り組んでいます。ヒトでは脳の老化が過度に進行することによりアルツハイマー病やパーキンソン病になります。当研究室では、これらの疾患の原因となる各種蛋白質の脳内凝集の動物種間の違いを検討しています。
個人的には、特定の犬種に多く発生する疾患に興味を持って研究を進めています。イヌが人間社会で暮らすようになった歴史はかなり古く、長い年月をかけて人為的な交配により現在みられる多様な犬種が作出されました。この過程で、ある病気を引き起こしやすい遺伝的特徴も特定の犬種に受け継がれたと予想されます。例えばパグには壊死性髄膜脳炎、コーギーにはヒトの筋萎縮性側索硬化症(ALS)に類似する脊髄変性症、ボクサーやブルドックには特定の脳腫瘍がよく発生します。
動物の脳の老化現象や病気の原因を丁寧に研究して、その原因を明らかにすることは、動物疾患の治療や予防に役立つだけでなく、ヒトの類似疾患の研究にも役立てることができるものと考えています。
教育内容
病理学を通じて幅広い獣医学の社会的役割を学ぶ
獣医学専攻では、様々な動物の生態や病態を学びます。獣医病理学は、基礎分野(解剖、生理学など)、応用分野(感染症、衛生学など)および臨床分野(内科、外科学など)の架け橋となる学問分野です。このため獣医病理学研究室では、卒業論文として取り組む研究テーマのほかに、学内外から依頼される動物の解剖や組織検査にすべての学部学生・大学院生が参加します。特に実際の症例による病理検査を通じて、得られる経験は非常に重要で、病理学的知識や技術が如何に獣医療において重要かを認識することができます。
当研究室では、このような実症例を通じて得られた知識を様々な分野に生かすための教育・研究を目指しています。病理学の知識は、基礎研究分野のみならず、製薬・食品関連企業における安全性試験、産業動物やペット動物の病理検査など、非常に広い分野で必要とされるものです。
卒業論文研究のテーマとしては「老齢動物におけるアルツハイマー病関連病変」「動物の神経系腫瘍やリンパ腫等の分類や病理発生」などに取り組んでいます。近年、当研究室を卒業した学部学生は、大学院博士課程への進学、製薬企業、農水省あるいは環境省などの省庁、小動物臨床などへ進んでいます。
共同研究や産学連携への展望
動物疾患の研究を通じて医学領域にも貢献する
獣医病理学では非常に幅広い動物種を研究対象とします。このため研究が進んでいるヒトの疾病を念頭におきつつ、動物種の特異性を考慮しながら病気と向きあうのが特徴です。
当研究室では長年、高齢動物の脳における加齢性変化を研究しており、これらの知見はアルツハイマー病(AD)やパーキンソン病などのヒトの疾患を理解する上で、有用な基礎情報を提供するものです。イヌの疾患については、フレンチブルドックの脳腫瘍、柴犬の消化管リンパ腫など特定犬種に好発する疾患はヒトの類似疾患のモデルとなりうるものです。またネコのメルケル細胞癌などの皮膚腫瘍の病理発生などが研究されています。
これらの研究を通じて、イヌではアミロイドβ(Aβ)の凝集による血管アミロイドや老人斑、ネコではリン酸化Tauの凝集による神経原線維変化、アシカなどのキキャク類ではヒトと同様AβとTauの凝集が同時に生じることが分かってきました。このような動物種の特異性を決定する因子を明確にできれば。ADの病理発生を明らかにできる可能性があります。
今後も獣医学にしか提供し得ない動物疾患に関する情報を発信し、獣医学領域のみならず医学分野にも有用な知見を得たいと考えています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 動物疾患の研究を通じて医学領域にも貢献する
キーワード2 : 疾患、脳老化、神経変性疾患、腫瘍、動物病理