農林水産物のマーケティングや、ツーリズムを利用した農村漁村の活性化などを研究しています。これを通じ、農林水産物を生み出す産地の価値を保全し、また生態系の価値を保全することを目指しています。
最近の研究結果では、水産物の水揚げ現場でロットが揃わない珍しい魚などは産地から出荷されにくい傾向があること、また(そのためか)消費者が購入する水産物はこの20年で多様性が減少していることが分かりました。流通小売りチェーンがビジネスを効率化させるため、少量生産される多様な地魚ではなく、大量のロットが揃いやすい冷凍の輸入品を好んで扱っている背景が疑われます。しかしこの傾向が続けば、人々が自然の恵みを偏りなく利用する日本古来の伝統が失われてしまうことが懸念されます。
このような研究結果は国際科学誌などで発表し、また政策決定の場にも情報提供をしています。2014年から18年までは生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)専門家として同機関の文書作成に関与していました。また2019年からは国連食糧農業機関(FAO)世界農業遺産(GIAHS)プログラムの科学アドバイザリー会合(SAG)委員として世界農業遺産の認定を行う作業にも関与しています(2022年は議長)。農村漁村の維持活性化のためカンボジアでマイクロファイナンスの効果検証作業なども行っており、2019年にはカンボジア王国から友好勲章(Royal Order of Sahametrei)を授与されました。