プロフィール
専攻 |
応用生命工学専攻
Department of Biotechnology
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研究室 |
醗酵学研究室
Laboratory of Fermentation Microbiology
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職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
小さな「化学工場」である微生物を活用して社会に貢献する
微生物はこの世界のあらゆる場所に存在する「目に見えない小さな」生物です。これらの生物は「小さい」ものですが、人類の社会には「大きな」貢献をしています。そのような微生物の中でも私たちが特に注目して研究材料としているのは「クスリ」を作る微生物として有名な放線菌です。放線菌は様々なクスリの原料となるような化合物を作ることができる有用な微生物です。このような能力を有する放線菌は細胞内に様々な化学反応を触媒できるミクロサイズの装置 (酵素) を持っている複雑な化学工場に見立てることができます。私たちはこのような工場のなかで、「クスリ」の原料となる可能性を秘めた化合物がどのように作られているかを明らかにすべく、「クスリ」を作るために必要な装置 (酵素) を把握し、さらに装置、1つ1つの機能をさらに詳しく調べています。これらの装置の機能が明らかになれば、装置に改造を施すことで新たな「クスリ」の原料となる化合物を作ることが可能になります。また、これらの装置の中には生活に欠かせない、プラスチックなどの素材となる化合物を生産するポテンシャルを持つものがある場合もあります。これらの研究により、小さな「化学工場」である放線菌の能力を最大限に人類社会の発展に活用できればと思っています。
教育内容
研究活動を通して、グローバルに活躍できる人材育成
私は微生物の物質生産能力の理解し、それらを人類社会の発展に活用することを目指して研究を行なっています。この研究には有機化学や生物学といった様々な分野の理解とそれらを組み合わせて活用する能力が必要不可欠です。一方で昨今は研究環境の変化の速さは目覚しいものがあります。私たちのような実験科学に重きを置く研究者でも、データベース上の膨大な情報を活用する必要があり、計算科学やプログラミングを活用することが求められます。研究のゴールの一つは論文を執筆することですが、そのためには「論理的思考」、「過去の研究情報」そして「自身の実験結果」を組み合わせる必要があります。これらを実施するプロセスにおいては、情報収拾能力や仮説とその検証方法の立案といった、どの分野でも使える能力を鍛えることができると思っています。全ての人が研究職につくとは思いませんが、大学院においては私たちの研究室で行なっている最先端の研究に「徹底的」に取り組むことでこれらの能力を伸ばし、現代のような周囲の環境変化が激しい状況において、どの進路をとっても活躍できる人材の育成を目指しています。
共同研究や産学連携への展望
放線菌の持つ物質生産能力を利用した医薬品開発やバイオプロセス物質生産への展開
私たちは医薬品の探索源として有用な微生物、放線菌の持つ代謝能力を活用すべく、研究に取り組んでいます。放線菌は様々な構造、生物活性を持つ二次代謝産物 (天然物) の生産能力を持っています。この高い物質生産能力は放線菌が様々な触媒能力を持つ酵素を持っていることに由来しています。そこで、私たちは二次代謝産物の生合成経路を解明することで、新規な触媒活性を持つ酵素を発掘し、その分子基盤を理解することに勤めています。これらにより、酵素や代謝経路を改変することで、天然物の類縁体の生産が可能になります。また、これらの生合成酵素の中には医薬品やポリマー原料など、有用な低分子の合成を高効率で触媒するものも知られています。これらを利用することで、バイオプロセスを利用した新た物質生産の開発に貢献したいと考えています。近年では、微生物の生産する二次代謝産物のなかでも、ジアゾ基を持つ化合物に着目し、その生合成機構を複数明らかにしてきています。これらの解明が進めば、ジアゾ基を持つ二次代謝産物を新たに創出することも可能になると考えています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 微生物、放線菌、物質生産、触媒、酵素、医薬品、バイオエンジニアリング、合成生物学、二次代謝、天然物
キーワード2 : バイオプロセス、低炭素化