プロフィール
専攻 |
応用生命化学専攻
Department of Applied Biological Chemistry
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研究室 |
食品生化学研究室
Laboratory of food biochemistry
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職名 |
助教 / Research Associate |
一般の方へ向けた研究紹介
試験管内で増やせるヒト臓器を用いて、これまでに分からなかったヒト体内で起こる現象のメカニズムを探る
私たちの体内で起きていることを明らかにすることは、知的好奇心を満たすだけでなく、食による健康維持や、病気を予防・治療するための機能性食品や薬の開発に役立つことが期待できます。これまでは死んだ人の解剖や動物実験でそうした研究は行われてきましたが、実はまだまだ分からないことがたくさんあります。その一番の原因は、生きた人の体内で起こっていることを調べる方法が限られることです。例えばある遺伝子の機能を調べるための方法として遺伝子改変動物が用いられますが、動物と人(ヒト)では遺伝子の機能が違うことや、そもそもヒトにしかない遺伝子もあります。その一方、近年、オルガノイドという技術が注目されています。オルガノイドは、試験管内で培養できる臓器です。これまでの培養細胞は癌由来の細胞などに限られ、ヒト体内の臓器とは似ても似つかないものでしたが、ヒトオルガノイドを用いて、正常なヒト臓器の反応や機能を解析できるようになりました。オルガノイドの培養は高額ですが、私たちは独自の工夫により大幅なコストカットに成功しています。現在はこの技術を用いて、これまでに解析できなかったヒト体内の現象を解明するための研究を進めています。
教育内容
ヒト臓器モデルを用いてヒトバイオロジーの真実に迫る
研究とは、まだ分からないことや知られていないことを解明したり発見したりするための試みです。そのため、これまでに解明されたことを学ぶという学業とは、根本的に異なります。良い研究を行うためには、専門知識に加え、課題発見力や感性、論理的思考力など、様々な力が求められます。これらは、若ければ若いほど効率的に身につけられますが、一朝一夕にはいきません。そのため私は、大枠の研究計画から個々の実験結果の解釈、考察に至るまで、担当学生には丁寧に考え方(実験の必要性や計画の立て方)を伝える指導を日々、心がけています。また、オルガノイドは従来の研究アプローチを大きく変え得る有望な技術ですが、培養方法の難しさなどからまだ広く普及するには至っていません。また、オルガノイドの実験では従来の方法をそのまま適用できず、自分で試行錯誤する必要に迫られる場合が多くあります。そのため、本研究テーマに取り組むことは、高い専門性を培うだけでなく、あらゆる研究の基礎となる課題解決力や論理的思考力を養うのにも最適です。テーマの内容は難しいものが多いですが、日々の研究活動を通じて、学生のうちから世界レベルで通用する研究者を目指すことができます。
共同研究や産学連携への展望
オルガノイド技術の活用による、動物実験に頼らないヒトバイオロジーの解明と新たな産業応用研究の展開
従来、栄養学や食品科学分野では、実験動物で得られた知見をヒトに外挿するという研究方法が主流であり、ヒト培養細胞はその補完的な位置づけとなる場合が多かったように思います。しかしヒトと動物では代謝機構が異なり、さらに食品企業などでは動物福祉の観点から動物実験の実施が困難になっていることから、ヒトバイオロジーを模倣した動物実験代替法が昨今、切望されています。オルガノイド技術の活用は、動物実験に頼らずにヒトの生理現象を解明する意味で合目的である上、従来の細胞株では評価不能な生理機能を評価できることを我々は報告しています(iScience、 2022)。また、オルガノイド培養のコスト削減(Stem Cell Reports、 2018)や食品成分の吸収・透過評価を可能にする小腸オルガノイドの単層化(EBioMedicine、 2017)など、様々な独自技術を開発しています。私は製薬企業に8年間以上在籍した経験があり、産業界で活用し、その成果を社会に還元することを目指した技術の開発には積極的です。オルガノイド培養方法やその活用法をお教えするだけではなく、共同研究を通じて特定の目的のためにオルガノイドを活用する研究をサポートすることも可能です。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : ヒト、臓器、細胞、三次元培養、生理機能、オルガノイド、新規技術、三次元培養、単層化、動物実験代替法、ヒトバイオロジー、吸収、透過、コスト削減
キーワード2 : 健康維持、疾患予防、疾患治療、機能性食品、創薬、動物実験代替、次世代、生理的妥当性、ヒトバイオロジー、食品企業、製薬企業、化粧品企業、共同研究、社会実装