プロフィール

山内 啓太郎

山内 啓太郎

YAMANOUCHI Keitaro

専攻 獣医学専攻 Department of Veterinary Medical Sciences
研究室 獣医生理学研究室 Laboratory of Veterinary Physiology
職名 教授 / Professor

一般の方へ向けた研究紹介

生きていく上でなくてはならない“筋肉”のはたらきや不思議さを科学的に明らかにする

 筋肉の役割は、体を動かしたり支えたりするだけではありません。例えば、呼吸に必要な横隔膜や肋間筋という筋肉もあります。全身の筋肉に問題が起きると、動くのが大変になるだけでなく、呼吸も難しくなり、命に関わることがあります。こうした筋肉の異常が起きる病気の一つに、筋ジストロフィーという遺伝性の病気があります。
 筋ジストロフィーでは、病気が進むと全身の筋肉が壊れて、脂肪に置き換わってしまいます。一方で、私たちが食べる肉の多くは、家畜の筋肉です。特に高級な霜降り肉は、牛や豚の筋肉に脂肪が入り込んでいます。実は、筋ジストロフィーで起こる筋肉の変化と、霜降り肉の脂肪が入り込む仕組みには似ているところがあります。
 研究では、筋ジストロフィーの動物モデルを使って、筋肉が壊れた後に再生がうまくいかなくなると脂肪に置き換わることが分かりました。さらに、脂肪に置き換わると筋肉の再生がますます難しくなることも分かりました。こうした研究は、人の医療だけでなく、動物の医療や畜産学にも役立つ新しい発見につながると期待されています。

教育内容

受動的な勉強からの脱却と能動的な勉強への転換を!

 獣医学教育の一端を担う立場から主に生理学に関する講義や実習を担当しています。講義では獣医師国家試験に向けたライセンス教育だけにとどまらず、アドバンストとして最新の研究内容をわかりやすく紹介することも心がけています。本来、大学は各自が学びたいこと、興味のあることを“能動的”に学ぶ場であるべきで、“講義”という形で受動的に与えられる情報をただ覚え、それを“試験”で答案上に吐き出すことで良い成績を目指すという習慣からは脱却することを学生には望んでいます。大学院では自ら研究テーマをみつけ、教員からのアドバイスを参考にしながら主体的に研究を進めるよう指導しています。学部、大学院で一貫している教育方針は「受動的な勉強からの脱却と能動的な勉強への転換」です。

共同研究や産学連携への展望

比較生物学的視点から哺乳類の生命科学研究にアプローチする

 家畜で霜降り(脂肪交雑)がおこる機構の解明という農学寄りの研究から、同じように筋肉内脂肪蓄積を生じるヒトの筋ジストロフィーの病態解明といった医学寄りの研究まで幅広く行っています。その過程で、筋肉の発生や再生に関わる遺伝子の中には動物種によって必ずしも機能が同じではないことが明らかになってきています。私たちが開発した筋ジストロフィーラットがマウスとは異なり、ヒトと同じように重篤な症状を示すことを発見したのはその顕著な例と言えます。実際に、この新たなモデルラットを用いることで、筋ジストロフィーでは細胞老化という現象が起こっているという画期的な発見にも繋がっています。このように比較生物学的視点から哺乳類の生命科学研究にアプローチできるのは、“動物種による違い”というものを常に念頭に置いて物事を考えられる私たち獣医学研究者の大きな強みです。

研究概要ポスター(PDF)

キーワード

キーワード1  :  動物、骨格筋、筋肉、脂肪交雑、筋再生、筋ジストロフィー、筋発生、ラット
キーワード2  :  難治性疾患、サルコペニア