プロフィール
専攻 |
農学国際専攻
Department of Global Agricultural Sciences
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研究室 |
国際水産開発学研究室
Laboratory of Global Fishereis Science
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職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
人の研究こそ面白い
私は経済学を使って水産分野の幅広い研究を行っています。水産というと、魚の研究をイメージするかもしれません。ですが、私の研究対象は魚ではなく「魚と関わる人」です。人の研究こそ面白いと考えているからです。
私の主要な研究テーマの一つは、水産物に関する消費者行動の解明、その中でも特に魚離れの原因究明です。世界では魚食がどんどん増えているのに対し、日本では魚の消費がどんどん減っています。何故でしょうか。色々な仮説が考えられます。私の仮説は、日本の消費者にとって重要な情報(例、鮮度)が適切に伝達されていないからだというものです。そこで、大学で擬似的な小売店を作って実験を行ったり、民間企業と提携して実店舗での販売実験を行ったりしています。
もう一つの主要なテーマは漁業管理です。農業と比べて、漁業は「海で勝手に育った魚を獲るだけなので簡単そう」なイメージがないでしょうか。実際には逆なのです。海にいる個別の魚は特定の人の所有物ではありません。その結果、自分が獲り残した魚は他人に獲られるという状況が発生します。つまり、個別の漁業者の立場では見つけた魚は全て獲るのが合理的なのです。しかし、全員がこのような”合理的”な行動をとると、全体では乱獲になってしまいます。この問題を解決するために、漁業者にヒアリングを行ったり、実際に行われている管理の効果を統計的に分析したりしています。
教育内容
他人のやっていないことをやる
研究室に入る時点では、魚や水産業に詳しい必要はありません。また経済学の知識がなくても構いません。大事なのは、何か他人がやっていない面白いことをやりたいというモチベーションと、それをやり抜く根気です。なお、研究室には留学生も多いですし、ゼミも英語でやっているので、ある程度の英語力は必要です。
研究室に配属された学生については、まずはできるだけ漁業の現場に連れて行くようにしています。漁業者さんと話をしながら、どんな問題があるのかを自分の肌で感じてほしいからです。また、産地で食べる魚の美味しさも体験してほしい点です。感動すると思います。
指導において重視しているのは、①論理構成力、②ライティングスキル、③プレゼンテーションスキル、です。これらのスキルは将来どのような道に進む場合でも役に立ちます。学士や修士で卒業する学生や、水産分野で就職しない学生にとっても、当研究室でのトレーニングが役に立つように配慮しています。
研究テーマは自由です。自分でやりたいテーマがあればできるだけそれができるように対処します。逆にやりたいことが決まっていない学生も歓迎します。面白い研究テーマはいくらでもあります。少しでも興味があったら、まずは研究室見学にお越しください。
共同研究や産学連携への展望
LCAと消費者研究で売り上げは増やせる
民間企業との共同研究は積極的に行いたいと考えています。特にシナジーが高いと思われるのは、消費者研究とライフサイクルアセスメント(LCA)の分野だと思われます。
消費者研究に関しては、主にどのような情報をどのように提示することが商品の売上増加につながるのかを研究しています。提示する情報のコンテンツだけではなく、商品上に貼付するラベルのデザインや貼付する場所なども研究対象です。当研究室の強みは、実際に支払いを伴う実験(リアル選択実験)のノウハウを有することです。これにより、ウェブアンケートなどよりも信頼性の高い知見を得ることが可能です。さらに2024年には民間企業と提携し、鮮度表示によって売上増加が増えることを実店舗での販売実験で検証しました。なお、このような消費者研究の対象は必ずしも水産物である必要はありません。
当研究室はLCAのノウハウも有しています。これにより、新しい活動や商品が、従来のものと比較してどの程度環境負荷が小さいのかどうかを計算可能です。2022年には、北部太平洋の大中型まき網漁業で漁獲されるサバ類は、他の水産物や動物性たんぱく質と比較して生産に伴う二酸化炭素排出量(カーボンフットプリント)が圧倒的に少ないことを示しました。環境負荷が小さいという事実や環境負荷を減らす企業努力は、それ自体が市場で評価されうる時代になっています。LCAをやってほしい、或いはLCAの結果を活かして売上を増やしたいといったニーズがあればご相談ください。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 消費者研究、漁業管理、ライフサイクルアセスメント、カーボンフットプリント、経済学、選択実験、鮮度、因果推論、機械学習
キーワード2 : 気候変動、食糧問題、資源管理、エシカル消費、SDGs、持続可能性、経済発展、トレーサビリティ