プロフィール
専攻 |
附属生態調和農学機構
Institute for Sustainable Agro-ecosystem Services
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研究室 |
生産生態学研究室
Institute for Sustainable Agro-ecosystem Services
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職名 |
准教授 / Associate Professor |
一般の方へ向けた研究紹介
光合成の仕組みを解いて食糧難に立ち向かう
地球レベルの急激な人口増加と環境の変化は、深刻な食糧不足を招きつつあり、作物の収量増加は植物科学研究の社会貢献における重要な課題です。私たちは近い将来、穀物や作物を安定的に供給できるようにしたいと考えています。作物の成長や収量を決定づける大きな要因のひとつとして、光エネルギーを生命が利用できる形に変換し、それらを利用して二酸化炭素(CO2)を炭水化物へと固定する光合成反応があります。私たちは、様々な植物を実験材料にして、光合成の環境応答メカニズムを包括的に解明するべく研究を行っています。それらの基盤研究の成果に基づいて、様々な環境下における光合成能力や作物生産性の向上を目指すなど、応用的研究にも着手しています。また、植物の環境応答の理解から、植物工場での効率の良い作物栽培技術の開発を目的とした研究も行っています。植物工場では、光や温度、湿度、CO2濃度、肥料濃度など、生育に必要な環境を自動制御することができるため、高品質のまま収穫量を増大することが可能です。これらの研究は、作物の安定的な供給や食糧不足の解消だけではなく、大気CO2濃度上昇抑制にも貢献できるので、社会的にも植物科学的にも重要な課題の一つです。
教育内容
将来の農学や農業に関わる分野を牽引する人材の育成
「フィールドとラボをつなぐ植物科学」を研究室の看板として掲げ、植物生理学や植物の環境応答に関する講義やトマト等の農作物を栽培する農場実習を担当しています。自ら動くことのできない植物は、自身が置かれた環境に俊敏かつ的確に応答し、その場所で生育しています。では、なぜそのような応答をするのでしょうか(=Why)?植物の環境応答の生理的なメカニズムはどうなっているのでしょうか(=How)?植物生産に関わる植物生理学の基礎を理解することで、食糧生産や地球環境の保持に果たす植物の役割と重要性を認識してほしいと思っています。また、農場実習では、温室内の環境制御や養液栽培によって、年間を通じて高品質・高収量を実現するスマート農業を共に学びます。栽培管理の基礎を体験し、「農のこころ」を理解していきます。植物の研究や農作物の栽培は、“百聞は一見にしかず”です。実験室でもフィールドでも、植物に寄り添うことで、植物の新たな一面や栽培の改良法が見えてくることでしょう。
私は学生主体の自由な発想を大切にして、学生と一緒に研究・学問を楽しむ時間をできる限り持つようにしています。このような教育と研究を通じて、世界の食糧問題の解決に寄与したいと考えています。
共同研究や産学連携への展望
フィールドとラボをつなぐ植物科学
生理生態学的および分子生理学的な観点から作物の環境応答の仕組みを解明し、その科学的知見をもとに、作物の生産性向上を目指して研究を行っています。これまでの成果として、植物の気孔をすばやく開かせることによる野外環境における植物の成長促進や、高温環境における光合成能力の強化による地球温暖化に適応した生産性の高いイネの作出、遠赤色光の活用による野外環境における光合成反応の促進等に成功しました。現在では、光合成や作物生産性向上に寄与する新規化合物を同定することで、農薬会社と連携した農薬や肥料の開発にもつなげたいと考えて研究を展開しています。
また、作物の環境応答の理解から、植物工場における効率の良い作物栽培技術の開発を目的とした研究も行っています。これまでに、葉の老化を抑制する栽培システム、薬用植物の機能性成分(薬効成分)を増量する栽培システム、また、LED補光によって天候を気にせず高品質トマトを安定的に収穫可能にする栽培システム等を構築しました。今後も、可能な限り環境負荷を低減し、高い生産性を安定して発揮する植物工場のモデル化を目指して研究を行いたいと考えています。
研究概要ポスター(PDF)
関連リンク
キーワード
キーワード1 : 光合成、植物生理、植物分子生理、作物、施設園芸、園芸、植物生態、植物工場
キーワード2 : 作物生産、食料問題、気候変動、地球温暖化、環境応答、環境記憶