プロフィール

吉岡 拓如

吉岡 拓如

YOSHIOKA Takuyuki

専攻 森林科学専攻 Department of Forest Science
研究室 森林利用学研究室 Laboratory of Forest Utilization
職名 准教授 / Associate Professor

一般の方へ向けた研究紹介

未利用森林バイオマス資源の効率的収穫技術の開発と経済性および環境性能の評価

 再生可能な資源としてのバイオマスは、日本の1次エネルギー供給の数%を賄えるポテンシャルがあると推計されています。国土の3分の2を占める森林に眠る豊富なバイオマス資源を持続的に利用することには、温室効果ガス(GHG)削減やエネルギー安全保障だけでなく、森林整備、生物多様性の保全、木材自給率の向上、雇用創出の点でも大きなメリットがあります。日本の急峻な森林からの調達コストが高額になることがネックとされる未利用バイオマス資源の収穫技術について、これまで経済性と環境性能の側面から評価する研究に取り組んできました。具体的には、林地残材、小径木、エネルギー林業として栽培したヤナギの収穫実験を通じ、国内ではじめてそれらの経済性を明らかにするとともに、エネルギー収支分析により、電力利用も「エネルギーの無駄遣いにはならない」ことや、化石燃料を代替することによるGHG削減可能量を定量的に示しました。現在は、地域で林業を持続的に経営するための事業規模を検討し、その条件下で地域において利用可能なバイオマス資源量と経済性の関係を分析するとともに、熱利用まで含めた総合的なエネルギー利用システムの環境性能を評価する研究を展開しています。

教育内容

森林資源の持続的な利用を技術的な側面から追究する

 森林利用学は、森林から得られる収益を最大化するために、主に工学的側面からアプローチする技術と科学の学問です。具体的には、第一次産業としての林業を対象として、採算性の向上、安全かつ快適な森林作業に関する研究などをテーマに、国内外のフィールドでの調査(現場)と数理的な理解(研究室)を組み合わせたスタイルを基本に据え、森林資源の持続的な利用、ひいてはサステナビリティとは何かを考究できるような人材の育成を目指しています。学部の講義・実習は林業機械、林道、作業システム、労働科学、バイオマスを主要なキーワードとして、講義室において日本の森林政策の立案に求められる技術的素養を身につけるとともに、実際の林業の現場では技術者育成に必要な基礎を習得します。修士課程では、研究室を拠点に学部での学びを応用的に展開させていくとともに数理的な分析手法の高度化に向けた指導を受けつつ、国内外の学術雑誌への論文掲載を目指します。論文の投稿は数多くの困難な場面をともないますが、それを乗り越えられたという経験が、博士課程への進学だけでなく、就職して社会に出た後の「生きる力」の涵養にもつながるという強い信念を持って指導に取り組んでいます。

共同研究や産学連携への展望

「22世紀の持続可能な社会」の構築に寄与する

 森林利用学研究室の120年の歴史には、林道や林業機械、作業システム、労働科学など林業の中でもとくに素材生産領域の研究成果に豊富な蓄積があり、日本の林業技術の発展のみならず林業行政にも大きく貢献してきたという自負があります。森林資源の持続的な利用をさらに俯瞰的な視座から追究していくために、森林科学だけでなく生物材料科学や農業情報工学、生物生産機械工学などの手法をかしこく採り入れた「生物システム工学」的な展開を目指し、たとえば「木材やバイオマスの生産から輸送、利用にいたるサプライチェーンマネジメントやライフサイクルアセスメントに関する研究」、「森林基盤としての林道や作業道の配置計画や施工技術の高度化に関する研究(たとえば地形情報を用いた自動化など)」、「林業機械による作業や木材生産システムの無人化・自動化に関する研究」、「人力が必要となる育林作業の省力化に関する研究」、「情報通信技術を用いた森林資源情報の処理による資源量の将来予測や伐出作業の生産性の推定に関する研究」といった研究に取り組むことで、22世紀の持続可能な社会の構築のために、森林利用学が寄与できることは少なくないことを示していきたいと考えています。

研究概要ポスター(PDF)

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最近のプレスリリース

地域の限られた林業労働力で持続可能な森林経営を行うには

キーワード

キーワード1  :  林業、林道、機械、作業、労働科学、バイオマス、経済性評価、持続可能性
キーワード2  :  森林資源の持続的な利用、再生可能エネルギー、木材自給率の向上、林業再生、資源問題、エネルギー問題、持続可能な社会の構築、地方創生